目次
はじめに
海外進学の相談を受けるようになってから10年弱となりますが、海外の大学でなにを学びたいの?と尋ねるとたいていの場合「英語」という答えが返ってきます。さらには、大学進学のためにどんな学習をしているかと尋ねると「英会話」という返答があります。
英語が好きであること、英語に興味があることはとても素敵なことです。
英語は面白いなという気持ちからキャリアがスタートした海外大学卒業生は多く存在します。きっかけはもちろん英語が好き、英語は楽しい!で良いかとおもいます。
しかしそれだけではもったいない。
「英語」を通して、さらなる自らの資質を高めていただくビックチャンスが目の前に広がっているのです。そして、海外大学は、英会話といったコミュニケーション重視の英語力だけを求めているのではありません。
今回は海外大学への選択が豊かなものとなるよう、大学側が学生に求める力を正しく理解するための分析を書いていきます。
海外進学=英会話ではない
海外大学で求められる力
留学をするには、まず話せるようにならないと考えるのは自然なことです。
海外では会話なしでは生活できないからです。
しかし、会話できること=海外の大学が求めていることではないことを知っておくことも重要です。
英会話が上手になりたいというモチベーションは大切ではありますが、求められているものは「大学生としての資質」となります。
必要な考え方
日本語に置き換えて考えると、明らかです。日本にもたくさんの大学がありますが、日本語を話せるだけでは大学には入れません。
小学校3年生4年生でも立派に英語を話しますが、彼らは大学生としては活動ができないので、中学校、高校で学びを深め大学機関に進むわけです。
たくさん話せる事は、海外の大学生活の中ではとても大切な面になりますが、話す事は楽しく、海外に行くとすぐに慣れる技術でもあります。
驚くことに、勉強せずに渡航し、生活に慣れ先生とのコミュニケーションも取れるけれども、肝心の成績が取れない、ビジネスマンとして論理的に物事を表現できない状態で卒業してしまう方がいるのが現状です。
また、私のところには、海外に2年間いるけれど、必要なスコアが取れず、一度日本に戻って英語を教えて欲しいと言う方がいらっしゃるほどです。
「海外では、何が求められているのか」を深く知り何を学ぶかを決めていきましょう。
海外の大学で求められる力
必要な資格
ヒントはTOEFL、 Duolingoと行った資格試験の中にあります。
アメリカの大学では、入学時に大学生に見合う英語力が足りないと判断された場合、ESLという英語学習プログラムの受講が必要となります。
ESLは「English as a Second Language」の略で、大学において英語を第二言語として学ぶためのプログラムを指します。
このプログラムは、英語を母語としない学生が学術的なコミュニケーションや日常生活で必要とする英語力を向上させることを目的としています。
このESLプログラムが免除される方法の一つとしてTOEFL、 Duolingoといった資格試験で必要な点数を得る方法があります。TOEFL、 Duolingoの試験に対応できる力を持っている学生は、大学で学ぶ資質を持ち合わせていると大学側が判断しているのです。
つまり、TOEFL、 Duolingoの試験内容をみるとどんな英語力が求められているかがわかるのです。
TOEFL
TOEFL (Test of English as a Foreign Language)とは英語を外国語として使用する人々の英語能力を評価するテストです。テストには、リーディング、リスニング、スピーキング、およびライティングの4つのセクションが含まれます。
TOEFL過去問で出ている実際のリーディング内容
- Deer Populations of The Puget Sound (生物学 生き物の生態について)
- Cave art in Europe (文化人類学・芸術)
- Petroleum Resources (資源・環境)
- Minerals and Plants (生物学)
(OFFICIAL TOEFLiBT TEST VOLUME1より抜粋)
TOEFL過去問で出ている実際のリスニング内容
- Biology (生物学)
- Literature (文学)
- United States Government (政治学)
(OFFICIAL TOEFLiBT TEST VOLUME1より抜粋)
TOEFL過去問で出ている実際のスピーキング内容
- Target Marketing (マーケティング・ビジネス学)
- Verbal and Nonverbal Communication (言語学)
(OFFICIAL TOEFLiBT TEST VOLUME1より抜粋)
上記のように様々な分野から英語の問題が出題されることがわかります。ただ英語が話せる人の入学を求めているのではなく「アカデミックなフィールドで卒業にむけて大学の授業に参加できる英語力」を求めていることがわかります。
Duolingo English Test
webで全世界どこからでも受けられる英語力評価テスト。
TOEFLやIELTSに比べ、価格が手頃で受験時間も短い。近年ではアメリカの大学中心にDuolingoテストをTOEFL・IELTSの代替テストとして認める大学が増えています。TOEFLとは異なり、学習者によって出題内容が変化する点が大きな特徴です。
Duolingo English Testの内容
- Read and Complete(文章を読んで正しい単語の穴埋め)
- Read and Select (見て英語の辞書にある英単語を選ぶ)
- Listen and Type (ディクテーション)
- Read Aloud (表示されている英文を読み上げて録音)
- Read, then Write(お題に対して自分の意見を書く)
- Reading comprehension(読んで正しい内容のものを選ぶ読解問題)
(Duolingoテストの一部)
TOEFLとDuolingoの違い
TOEFLテストと比べると、表示されている英文を読み上げて録音やディクテーションなど背景知識を必要としないセクションが多く存在するものの、依然として歴史や政治、文学などの題材を主とした文章の穴埋めや、論理的に文章を書くライティングのセクションが含まれています。
60分のテスト全体を見ても、「話すだけのセクション」は存在せず、英会話の力を求めているのではなく、先生が提示した資料を正しく読んだり、自分の意見を簡潔に述べたり、正しく求められたことを描写する力が求められているようです。
TOEFLやDuolingoの試験を見ても、単に英会話できる力を求めているのではなく、様々なバックグラウンドをもった学生が集まる海外の大学では、的確にコミュニケーションを取ったり、正しく研究結果を読み取ることができたり、学術分野に理解がある人物を求めていることがわかります。
- ライティングの題材の違い
- スピーキングの基準の違い
まとめ
海外の大学では「大学生としての資質を持っているか」が入学判断の基準となります。
アメリカの大学を始めとした海外の大学では最初から専門を学ぶのではなく、生物、コンピューターサイエンス、政治、芸樹、哲学など様々な分野を知り視野を広げた上で専門の学びに進むケースも少なくありません。
そのような状況を考えるとより抽象的な概念を深く理解し表現できる人物に入学してきてほしいと大学側が考えるのは不思議なことではありません。単に海外=英語力ではないことを知ることが留学成功の第一歩だとも言えるでしょう。